くろぼく強力の書

先日リリースした新商品「くろぼく強力(ごうりき)」を取引先の酒販店さんや飲食店さんで、ちらほら姿を見かけるようになってきました。

「くろぼく強力」のくろぼく(黒ぼく)とは、火山灰が積もって出来た火山灰土のこと。とても簡単に説明すると、くろぼく強力は黒ぼく土の土壌で育った強力米(鳥取県の固有品種の酒米)で仕込んだお酒です。

写真は、先週の東京出張中に錦糸町の醸造家oryzaeさんで撮った一枚。右側の女性がこの度「くろぼく強力」のラベルの書を担当してくださった書家の国分佳代さん。

佳代さんはこれまでにも500本以上日本酒ラベルの仕事をされていますが、意外にも蔵と直接やりとりをする仕事の進め方は初めてということで。普通は間に広告代理店さんなどが入ることの方が多いのですね。

酒ラベル仕事の依頼をするのは初めての私も、出来うる限りの背景(この酒の米を作っておられる農家の杉山さんの話や、社長がどんな酒に仕上げたいと思っているのかなど)を伝えながら制作に取りかかっていただきました。

そして出来上がったのが、こちらのラベル。デザインを担当してくれたのは、私と同じく酒ラベル仕事初挑戦の中澤永子さん。中澤さんはシンプルななかに温かみのあるデザインをするのが上手な人。ふだんは、女性向けのかわいらしいデザインを依頼されることがほとんどだと思うけど、この人の中身はそんなにホッコリさんだけではなくて、けっこう骨太で情熱的な部分があるぞ!と前から思っていたので、一緒にはじめてのことをやろうよと誘ってみました。

県内の他の酒蔵さんのラベルを見ても、強力のラベルは男性的な力づよさが全面に出た書を使ったデザインが多いように思うのですが、佳代さんの書は力強さにくわえてやさしさや丁寧さも感じられます。

強さとしなやかさが共存する仕事。書にもその方の生きる姿勢みたいなものが出てくるのかもしれません。

このあと、写真左・店主の竜太郎さんが「くろぼく強力」を常温、ぬる燗、熱燗で出してくださって、それぞれの味わいの違いを楽しませていただきました。

このときのお燗が、実はうちで社長がお燗をつけた「くろぼく」より美味しく感じて。あとで、そのことを社長に報告したら「家で飲むより美味かったのなら、それは私より竜太郎の燗つけが上手だったということだ。さすがプロ」との返事がかえってきました。

はぁー。あらためてスゴイな、お燗番(かんばん)の役割。こういうことなら、もっとお燗のつけかた、よくよく見ておけばよかった。

おっと、話が横道にそれましたが。今回はラベル一枚にも色々な気持ちがこもっていますよ〜、というお話でした。

                        (食と酒の実験室 山根明子)