イベントレポート「いま酒の造り手として知ってほしいこと」

先週の土曜日は、鳥取駅近くにあるYpub&Hostelさんとの共同企画での酒×食のイベント「山根酒造とのんでみる。」でした。

今や酒のイベントは年間を通じて日本全国で山ほどありますが、そのほとんどは外部からお声かけ頂いて蔵元が県外に出向いていくスタイルで。それに対して今回は酒蔵で働く私たちが企画運営に主体的に関わり、かつ地元での開催という点が大きな違いでした。

そもそもなぜメーカーである我々が今あえて日本酒イベントをしようと思ったかと言うと。日本酒の飲み手は全国的に年齢層が高くなっているなか鳥取も基本は同じで、かつ若い人が少ないので加速度具合に拍車がかかっているといった感覚があり。とにかく地元の飲食店さんに伺っても若い人が日本酒をのんでいる姿に出会うことが本当に少ないのです(ちなみに山根酒造場の酒は東京、関西などの都市部消費が多いです)。

日本酒は米も水も土地に根ざした酒なのにこの状況。

これは鳥取で生まれた人間としてもかなり寂しいです…。

では、みなさん何を頼んでいるかといえば、ハイボール、ビール、チューハイなどが多い。これらのお酒は気楽に頼めるけれど「日本酒はなんだか難しそう」という意識があったり「二日酔いがひどいんじゃないか?」というイメージもまだまだ強いようです。

日常のなかで若い人と日本酒の接点があまりないところで、造り手だからこそ伝えられることは何か。そして、誤解や偏見のついてまわる日本酒の世界の「本当のところ」をどう体感してもらうか。ただ楽しく飲んで盛り上がって終わりでないイベントというものをカタチにしてみたかったのです。

1部の蔵元と杜氏の日本酒講座は、年齢をあえて40歳以下のかたを対象とさせて頂いたこともあり、募集を始めてからも一体どれだけの方が参加してくださるのかかなり不安もありましたが、最終的には有り難いことにキャンセル待ちも出て(涙…宣伝に協力してくださった、みなさまのおかげです!)。

ご参加いただいたかたは学生さんや飲食店さんや酒屋さん。地域おこし協力隊として活動されている方もあれば、フリーのカメラマンさんもおられたりと立場は様々でしたがみなさん熱心に話を聞きメモをとり、気になることは質問をしてもらったり、味の感想を言い合ったりであっという間の2時間。

酒米による味の違いや酒造りの工程などを解説中(蔵元の山根正紀)。

参加者の方からの質問に答える前田一洋杜氏。

知識をつけるだけでなく、舌や体で感じることがなにより大事ということで、6種のお酒の利き酒や、発酵食品(調味料)を使ったおつまみとの食べ合わせ、常温とお燗をつけたときの味わいの違いなども体験していただきました。

おつまみは家で簡単に再現できるものばかりご用意しました。塩麹とハーブに漬け込んだ豚肉×トマト、にんじんステーキは柚子胡椒をきかせたソースで。卵の黄身の味噌漬けに酢玉ねぎとおかかをのせたものなど…。どれも、口のなかでお酒と混ざり合うことで美味しさがかけ算に。

お燗酒というと、それだけでアルコールが鼻につく酒なんじゃないか?と毛嫌いされる方も多いですが。山根酒造場の酒は温めて味がまーるくなって旨味が広がる酒が多く、これまでの燗酒のイメージがまったく変わったという声も多かったです。(そうなのですよ、それを知って頂きたかったのですよ〜)

ストレス解消やノリでのむお酒もいいですが、自分の五感と向き合ったり、たべものとの組み合わせで食卓を豊かにするようなお酒の楽しみ方を共有できる人たちが少しでも増えていったら、こんなに嬉しいことはありません。

そして今まであまり出会っていなかっただけで、この地で暮らす若い人達のなかにも潜在的な仲間は確実にいるんだ!まだまだ何かを諦めるのは早いぞ、そんなことを感じた1部でありました。(つづく)