基本的に群れるのが苦手なのでたくさん人に会うのは疲れるけれど、そんな私に元気をくれるのもやっぱり人で。きょうは山根酒造場の近くの浜村温泉という鄙びた温泉街に移住してきた愉快な若者たちをご紹介したいと思います。
彼らに初めて会ったのはいつだったかは忘れてしまいましたが、場所は知るひとぞ知る中古車屋さんが営む無添加系ラーメン屋「ホットエアー」でのこと(ここのラーメン美味しくて、ときどき夫婦でお昼にお世話になってます)。
いつものようにラーメンを食べにきた私たちに地元で工務店を営むNさんが「紹介したい面白いやつらがいる」と引き会わせてくれました。そのときの彼らの印象はというと、服装も含め自由な感じの漂う目のキラキラした人なつっこい笑顔の若者たち…といった感じで。
その後、蔵にも遊びに来てくれて一緒に料理とお酒を囲みながらいろいろ話をしたりしました。彼らの名前は「パーリー建築」。
「旅するリノベ集団」などとも言われる彼らは、これまで日本全国にあふれる空き家に住み着き、その地域の人も巻き込みながら人の集える場所づくりを続けてきていて。そんな彼らがしばらく鳥取に移住することを決め、いまは浜村温泉の空き家物件を「喫茶ミラクル」という名のシェアキッチンに作り替え、そこを拠点にしながら各自の活動の幅もじわじわと広げている最中といったところ。
詳しい紹介はネットに情報があふれていると思うので割愛するとして…。なんとなく彼らの活動と自分の心が共鳴するところとしては、もともと人間本来がもっているはずなのに、眠ってしまっている力に揺さぶりをかけているところなのかな?と思います。言葉を変えるなら、自分のなかの「野生」を呼び戻す作業をしているように感じるところ。
食べることひとつとっても、自分の手を動かしてできることは沢山あります。特に鳥取のような場所に住んでいれば、食べるものを自然から分けていただくことも可能。私は大工仕事はこれまでほとんどしたことはないけど、それはどこかでそういうことはプロに任せる仕事、素人が下手に手を出しちゃいけない、みたいな思い込みがあっただけかもしれず。
そう、いつの間にか「ではならない」とか「~するべき」という自分で作った固定観念にがんじがらめになると、勝手にやってはいけないことが増えていくけれど「果たして本当にそうなのか?」ということをもう一度疑ってみることはときどきとても必要なことで。
彼らがリフォームを手がけた建物は、たしかにいわゆるプロの工務店さんなどの仕事とは違い、キッチリした美しさはないかもしれないけど(ゴメンネ!パーリー)、でもそのぶん少々いびつでも子どもの頃必死になって作った「秘密基地」のようなワクワク感があり、そういう試行錯誤感や作業の間に培われた記憶(愛着)のようなものが作ったものから漏れ出てるところが人を惹き付ける魅力のひとつなのかもしれません。
私にとってパーリーは、ガチガチのプロと素人の両方の気持ちを理解しつつ媒介(翻訳?)をしてくれる人たちといったイメージでしょうか。たぶんこれからどんな分野でもこういった役目を果たす人たちが必要になると思うのです。
生きること生活すること自体を受け身でなく、自分の手で楽しいものにすること。古い空き屋に新しい命(役目)を吹き込む作業のなかで、その土地に住む人や根付いた文化を知っていくこと。
「パーリー(パーティー)建築」という名前の響きから、ちゃらい感じを受ける人もいるかもしれないけど、よくよく話してみると、彼らの活動の本質はしごくまっとうでまっすぐで。かつ、それを正論を振りかざすでもなく、なんとも軽やかに自分も楽しみ周りも楽しませながらやっているところが頼もしいなぁと思うのです。
あとは、私個人的には単純にお昼ごはんを食べられる場所が極端に少ないこの界隈に、通えるお店が増えたことがとても嬉しい!
最後にひとつ告知を。パーリー建築の山際くんが、近々こんな企画をするようです。ご興味おありのかたは、ぜひ問い合わせてみてくださいね。
(食と酒の実験室 山根明子)