11月8日は鳥取駅近くにあるゲストハウス、Y Pub&Hostelで開かれた日本酒講座におつまみ担当でお邪魔してきました。こちらの講座、岡山県の西粟倉村にある酒屋「酒うらら」を営む道前理緒さん(以下、理緒ちゃんでいきます)が8月から月に1回担当されていて、今回のテーマは「お酒と料理を合わせる with食と酒の実験室」でした。
まずは、理緒ちゃんが 座学でお酒と料理の合わせ方のコツを解説。そしてお酒だけ飲んでみる。次に料理(つまみ)と合わせて感覚の違いを楽しんでみるという流れ。
彼女の日本酒講座が面白いのは、なんといっても「愛あるスパルタ」なところ。受け身でお勉強するだけでは、決して帰してもらえません。お一人お一人に必ず「で、あなたはどう感じましたか?」というところを言葉にしてもらい、それを一緒に参加したみなさんと共有するというスタイルです。
実際こういう講座というのは、講師のいうことをただ有り難がって聞いているだけでは、その場ではわかったような気がしても、家に着いたら「あれ?結局何も身についていない」ということも少なくないかと。
なんでもそうですが、知識を自分のものにするには必ず自分の体感に落とし込み(腑に落ちる体験)、自分の頭で考える過程が必要で。彼女は一貫してそこを追求した伝え方をしているのが面白いなぁと思います。
そんな理緒ちゃんからのおつまみのオーダーは、いろいろなタイプのお酒との相性を感じてもらいたいので、おつまみも甘味や酸味、コクがあったりほっとするお出汁のようなものがあったり。とにかくバリエーションがあると嬉しいということでした。あとは、酒粕を使ったおつまみを入れて欲しいということだったので、秋の味覚のいも煮汁、豆腐ちくわとらっきょうのピンチョス、アボカドと酒粕のピザ、ナッツとドライフルーツたっぷりの酒粕とクリームチーズのディップなどをご用意しました。
日本酒は食中酒なので、やはり食べて飲んでの往復運動が生まれると、お酒だけでもおつまみだけでも味わえない幸福感があり、会場も楽しい雰囲気が漂っていました。
最後のお客さまの感想で「お酒だけ飲んだら正直いまいち?と思ったものも、温かくしていも煮汁と一緒に食べるととても美味しく感じて驚いた」「古酒のなかに微かに蜂蜜のような風味を感じて、熟成した粕を使ったディップがよく合うと思いました」など具体的な話が聞けたのも刺激になりました。
食と酒の相性はある程度は方程式があるにせよ、やはり味覚はひとりひとり様々なので、絶対これだけが正解というものがあるわけではなく。自分がどう感じるかを丁寧に拾ってみる。そしてその感覚を大切に育てていくということが料理も酒も基本なんだろうなと思います。
誰かがいった正解らしきことを鵜呑みにすれば簡単に人のせいにも出来るし、不安にならず楽だけど。それではいつまで経っても自立出来ないし、きっとあなたのなかの五感が「自分の感覚を無視するなー。オレを粗末に扱うなー。もっと自分を信じろ」って悲しみます。
それに無駄なく正解を求めるって、なんだかとてもつまらないじゃないですか。一見失敗に思えるような体験も、自分のものさしを作る材料のひとつ。そう考えたら、そもそも失敗などないのだから色々経験する(味わい切る)に限りますね。
あー、これなんか人生と同じかも。
初めて会った誰かと一緒な感覚を味わえるのも嬉しいですが、まったく違った感覚を聞けるのも、こういう会で人と一緒に飲む醍醐味だなとも思った一日でした。
ご参加してくださったみなさま、理緒ちゃん、Yのみなさま。ありがとうございました!
(食と酒の実験室 山根明子)