昨夜お邪魔した鳥取市内の焼き鳥やさんで「なぜ純米酒なのか?」と書かれた一枚の貼り紙を見つけました(以下です)。
◎純米酒ってなに?
純米酒は日本酒のジャンルのひとつ。お米、麹(こうじ)、お水だけで作るお酒です。自然にあるものだけで造る最も日本人の体質に合うお酒だと思っております。
◎でも日本酒って悪酔いするじゃん!
私は以前、日本酒が大嫌いでした。あるとき、大量に日本酒を飲みました。舌を刺す辛さ、翌日は頭痛がひどく、胃からこみ上げる臭い…。「日本酒なんて二度と飲まない!」公言していたほどです。
しかし付き合いで純米酒を飲み始め、ある日、一晩中記憶がなくなるまで純米酒しか飲まなかった翌日のことです。体のだるさや喉の渇きはあったものの「頭痛」「吐き気」がまったくなかったのです!
人生で初めての体験でした!※私、個人の体感であり、体質、摂取量により個人差があります。さて皆さんが飲んだことのある日本酒は純米酒でしたか?以下に当てはまったら悪酔い必須。
1)あえて名前は書きませんがよくメニューにある日本酒。(純米酒と書かれてましたか?)
2)酎ハイやウイスキーなどと「チャンポン」しませんでしたか?
3)ほとんど食べずにひたすら飲みませんでしたか?
この三つに当てはまった状態で日本酒を飲んだら、そりゃ悪酔いしますよ(笑)。
◎酒は純米、燗ならなお良し
「日本酒の生き字引き」とも言われた日本酒業界の重鎮、故・上原浩先生の言葉です。なんと!鳥取の河原町のご出身です。
私も純米酒を飲み始めたころは冷酒しか好みませんでした。もちろん今でも飲みますよ。ただ今の気持ちは純米酒は熱燗がおすすめです。理由は原料がお米だから。お料理に合わすには熱いほうがいい。ましてや焼きたての焼き鳥を提供する御銀では。
冷めた白ごはん、美味しいですか?熱々のおかずなのに冷たいご飯で食事して美味しいですか?
だから私は熱燗がおすすめです。
……店主の経験や思いを素直な言葉で綴ってあり、私もふだん感じているような共感することばかりで読んでいて胸に沁みました(場所はトイレだったけど、トイレでうんうん激しく頷きました)。ほんと最初にどんなお酒に出会うかで「日本酒なんて最悪!嫌い!」というトラウマを持ってしまっている方はとっても多いですね。人は一度嫌な思いをしたら、なかなかわざわざもう一度トライしようとは思わないので、その気持ちもわからないではありません。
でも、日本酒って一言でいってもさまざまです。一度の失敗で「日本酒とはこういうもの」と決めつけちゃうと、その後のいい出会いをするチャンスも自分から逃してしまってもったいない。
すべてのことは自分が何を選び、どう付き合うかで変わっていきます。そこを忘れて、酒だけを悪者にしちゃうのは、かなり可哀想。(お酒は自分の付き合い方次第で、毒にだって薬にだってなります)
「いいお酒は冷やで飲むものだ」という古い時代の言い伝え?も未だにしつこく残っていますが。思いこみの枠さえ外せば、新しい経験が出来、嫌な記憶だって上書き更新が可能です。(ある飲食店の店主さんがいっていました。電話だって昔は黒電話だったのが、いまはスマホに変わっているでしょ。酒だって変わっていっているのに、人間だけ昔の記憶のままでいたらズレがあるって。)
私は日々家で晩酌をしますが、まっとうに造られた軸のしっかりしたお酒は上手にお燗をつけてあげると、舌先で美味しいだけでなく飲むとふわ〜っと体の中から温まり緊張もほぐれ、なんともいえずリラックスさせてくれます。そしてなにより食欲が湧いてきて食事が美味しく楽しくなるのが一番の魅力。
そんな体験をもっともっとたくさんの人に味わってほしい。そしてそんな楽しさや美味しさを一度体験した人は、今度はどんどん伝える側にまわっていって、みんなでわかちあえばいい。ただただ単純にそう思うのです。
(食と酒の実験室 山根明子)