酒米農家さんがくださったもち米も残っているし、旧正月だし…。ということで、私が蔵の台所でまかないを作っていると、土間からぺったんぺったん餅をつく音が聞こえてきました。
蔵の人たちが山菜おこわと、かき餅(柚子と青のりの2種)を作ってくれて。おこわは丁寧にパックに詰めてみんなに配ってくれたので、私もその日の夕飯に美味しくいただきました。
普通の会社なら「仕事中に何してるの?」ってことになるのかもしれないけれど、私はなんだかこういうところも含めて山根酒造場らしくていいなと思ってしまいます。
そういえば先代が生きておられた頃は、いまと違って酒蔵は夏は暇だったので、先代(社長)の一声で社員みんなを引き連れて川に魚を獲りに行ったもんだ、なんて話を聞いたことがあります。
先々代はなんと馬に乗って、鳥取の夜の盛り場に飲みに行っていたとかいないとか(それだけでなく、帰り道は馬が覚えていて連れて帰ってくれるとか)。なんとも豪快な話すぎて、事の真相は分かりませんが本当だったら面白いなと…。
ときどき蔵の昭和な風情の台所の窓から、しんしんと降り積もる雪を見ながら一人料理をしていると。一体今がいつなのか分からないような感覚に落ち入るときがあるのですが、そんなところも含めてこの蔵の魅力があるように感じています。
(食と酒の実験室 山根明子)