蔵まかない用味噌の仕込み

三寒四温とはよく言ったもので、長袖Tシャツでも過ごせるくらい温かくて「やった、春になった!」と思ったらまた身の縮むような寒さがぶり返したり。温度差が激しくて、それにともない心身ともにアップダウンしやすい時期ですね。

蔵の近況はというと…。

今期は蔵のまかないに使う味噌を市販のもので購入していたのですが、なにせ朝昼晩とあたたかい汁物がつきものなので日々使う量も半端でなく。買っても買ってもびっくりするくらいあっという間になくなってしまうので、今後に備え今年は蔵でまかない用の味噌を仕込むことにしました。

味噌づくり自体はこれまでも何度もやってはきましたが、とにかく仕込む量が多い!かつ使う豆は、いつもの白っぽい大豆ではなく杜氏の前田さんが手配してくださった黒豆だったり、麹も玄米麹を蔵でつくってみてくださったりで。

同じ味噌を仕込むといっても、これまでやったことのない体験のオンパレード。

今回、味噌づくりを中心になってやってくれたのは蔵まかないの相棒の江田くん。まかないの仕事は終わったのですが、忙しいなか駆け付けてくれました。ありがたや。

今回は豆も、せいろで蒸したものと鍋でゆでたものの両方を混ぜて使うことに。これまでは、味噌の豆はゆでるものとばかり思いこんでいましたが、比べてみるとゆでたものより蒸した豆のほうが味が凝縮していて美味しく感じました。また杵と臼を使って潰した見た目もそれぞれにまったく違っていて。なんでもやってみないとわからないなと思うことばかり。(すり鉢やフープロでなく、杵と臼で豆をつぶすのも初めて。これだと本当に早いです)

蔵での味噌つくりは、義母に聞いたところ「そういえば、むかしは蔵にある大きな蒸し器で大豆を蒸して、おばあさん達がケンカしながらまかない用につくっていたよ」とのことで。そうか、むしろこういうやり方がここでは普通だったのか?と思ったり。

ひとりでやると気が遠くなる味噌づくりですが、今回は蔵を訪ねてくださったお客さまなど、いろいろな方のお力を借りて、なんとか無事仕込むことが出来ました。感謝!みんなの手についている常在菌が入ってきっとおいしい味噌になることでしょう。

最後は、酒うららの道前さんのアイデアで酒粕でふたをしておしまい。これまで私は塩でふたをするようにしていましたが、酒粕はアルコールを含んでいて天然の防腐剤がわりにもなるから試してみたいなと思っていたら、ちゃんと言わずともそうしてくださっていました。

これまでの私の味噌づくりの体験では、味噌は夏を越してその年の秋口からは食べられるというのが常識だと思ってきたのですが。この蔵は社長も蔵人も酒だけでなく味噌ももっと寝かせないと味がなじまないよ!と口を揃えていうので、次の造りの時期のまかないにはまだこの味噌は間に合いそうにありません。

時を経て、おいしく育ってくれるのを人間は気長に待つばかりであります。

                           (食と酒の実験室 山根明子)