やっと出会えた授かり猫

◉はじまりは二匹の猫から

雄猫の凪と雌猫の桜

倉吉の保護猫団体「猫じゃらし」を通じて、我が家に二匹の猫(凪と桜)がやってきて半年が過ぎようとしています。昔からとにかく動物が好きで、ちいさい頃は獣医に憧れていた夫と、ずっと子どものいる家庭をつくりたかった私。もはや人間でなくとも生き物と一緒に暮らせれば・・・と何度か譲渡会に足を運んだのですが、なかなかタイミングが合わず。諦めかけていた頃に「クリスマスの日に保護された二匹の猫がいるのだけど会ってみますか?」という一本のメールをいただき、ドキドキしながら会いに行ったことを今でもよく覚えています。

初めて二匹の猫と出会った場所は倉吉の「お米と自然食品のお店ねこ。」さんでした。店主の福本靖子さんは、店名に“ねこ”と付けてしまうくらい根っからの猫好きで、子どもの時から沢山の猫と暮らしてきました。そして、個人で何匹もの捨て猫の面倒をみながら、居場所を見つける活動を数年続けられたのち、開いたプラットフォームを持つ必要を感じて保護猫団体「猫じゃらし」に合流されました。いまは主要メンバーとして、「猫じゃらし」の活動を牽引しておられます。

◉保護猫ではなく“福ねこ”だった

出会いとは不思議なものです。二匹の兄妹猫を見た瞬間、私の心のモヤはいっぺんに晴れ胸のあたりにじんわり温かいものが込み上げてくるのが分かりました。止まっていた歯車がようやく動き出すような感覚。「ああ、これまで長くご縁がなかったのも、この子達に出会うためだったんだ」。そして、あまりに二匹の仲がよいので、これは人間の都合で引き離してはいけないのでは?という思いにかられ……はじめての猫との暮らしは、当初の想定とは違った形でスタートすることとなりました。

私の場合は、根がクソ真面目でかつわからないことだらけだったこともあり、しばらくは「猫に万が一のことがないように」と本やネットで猫にまつわる知識を吸収することに没頭しましたが、なぜか調べれば調べるほど不安も募る一方。しかし、二匹を “護(まも)る”意識でガチガチになっていた私に、猫たちは日々の行動でただ護(まも)られるだけの弱い存在ではないことを次第に教えてくれました。

自分たちなりのペースでそこに生きているだけで、人の気持ちを穏やかにさせ、気が向いたらふっと甘えてくるし、気が済んだらすっといなくなる。何かを得るために人間に媚びることもなく、とても自然でとても自由。眠たくなればコンコンと眠り、自らの欲求にとても素直に生きている。

気がつけば一緒に暮らす私たちも、少しずつ動物的になって、眠っていた野生が目覚めていくようでした。
はじめは、人間の都合で捨てられた猫たちを「かわいそう」に思う哀れみのような感情もあったのですが、なんのことはない。そんな同情心をもつのはおこがましい話で、むしろこの子たちは私たちの意識を解放し幸せにするためにやって来てくれた“福ねこ”なのでは? と思うまでに時間はかかりませんでした。